MY☆FAVORITE
父がニコニコしながら段ボールを抱えて家に入ってきた。
玄関をあけるとすぐに台所のある我が家、父がドアを開けて姿を見せた瞬間、母は怪訝な顔で
「また買ってきたんだって?」
と父に言うと、父は笑いだした。
そして母と姉と私を居間に呼び、段ボールを畳に置いた。
「何?」
段ボールの中身は薄汚い毛布だった。
ニコニコな父がその毛布を取ると、小さな茶色い物体が寝ていた。
「犬だ!!」
姉が叫び、やっと私はその物体が犬だとわかったのだ。
近所に野良猫はたくさんいたが、犬は伯父の家にいる大型犬しか見たことがなかった私は、姉の声でノソノソと動き欠伸をした茶色い小さな犬に心を奪われてしまったのだ。
母がどうするのよ?!飼えないわよ!と父に怒鳴っている間に、姉と私は代わる代わる茶色い犬を抱っこしていた。
クルンと巻いた尻尾をフリフリし顔やら手やらをペロペロ舐めてくる犬に、姉も私もメロメロになってしまった。