BLACK PRINCE
first
「お姉さん、ちょっといいですか?」
「………‥。」
ほとんど黒に近い焦げ茶の品のあるセミロングの髪の間からパールのカチューシャが光る。
「……‥あれ?お姉さん?」
「……‥。」
――無視かよ!
「なあ、お姉さん?返事くらいしてよ。」
「………‥。」
「なあって!」
俺は思わず女の肩を叩いてしまった。
「―!? えっ何…」
女は、ビックリしたように顔を上げた。
――えっ何って!こいつ、大丈夫かよ!
「君、大丈夫?
さっきからずっと話し掛けてんのに……」
俺が呆れたように言うと、
「えっ?嘘っ!」
と言って周りをキョロキョロしだした。
「――プッ」
俺は思わず吹き出して
「君、面白いね!」
と、笑ってしまった。
すると、女の顔があからさまに変わった。
「はあ!?誰よあんた!」
むっとした顔のこいつは、真剣に聞いてきた。
――え?怒ってんの?
焦った俺は、仕事のテンションで乗り切ろうと決めた。
「俺はね〜翔平〜!君は?」
ふと女の後ろを見ると、さっきのオッサンがジロジロ見てきていた。
焦った俺は、
「てかさ、淋しいなら
今から俺について来いよ!」
と言って女の手をひいた。