BLACK PRINCE
―――――……
次の日の営業後、代表とメシを食いに行くことになった。
『翔なに食う?』
色んなハンバーグが印刷されているメニューを見ながら、代表が微笑む。
『普通のでいいです。』
店員さんに注文し終えた代表は、
別のメニューを眺めながら
『何で女はパフェが好きなのかな?』
と言った。
『さあ…ブリッコですかね。』
と言い、口元を緩ませた俺を見て代表も笑う。
あいつも、あの男の前じゃブリッコなのかな。
パフェを美味しそうに食べるのかな。
俺を睨みつけて低い声で追い払おうとしたあいつは、
あの男の前では声を高く、目を丸くして媚びるのかな…。
―――『翔?』
代表がテーブルを軽く叩いた音と共にはっとした。
『どした?ずっと上の空だよ、今日。
何かあったんなら言えよ。』
詳しい事は知らないが、
この業界歴も長いであろう代表に一つ質問をしてみた。
『あの…代表って今までに女を殴ったことあります?』
『…………え?急にどうしたんだよ。
女は殴るものじゃないだろ。
愛して育てるものだろ?』
代表の甘い言葉を聞いて、まるで自分が言われたかのような気分になる俺に
『好きな子でもできたか?』
代表が言ったと同時に、俺の心臓あたりが痛んだ。
え…俺好きなのか?
……いや、まだそういうんじゃない。
『いや、まだ……』
『恋愛は禁止だから。』
―――――は?
唖然とする俺に代表は
『翔にはそんな暇ないはずだよ。
もっと営業しないと売り上げ伸びないよ。』