BLACK PRINCE
origin
―――――‥‥…
「翔〜!」
「ハイ!」
「これ、いつもの所に配達頼むわ!」
「了解です!」
店長からピザを受け取り、バイクに積む。
アクセルを思い切りひねり、あるマンションを目指した。
太陽は少し冷たい風を残したまま、空に消えていった。
―――――‥…
「遅い〜!」
インターフォンを鳴らすとドアが勢いよく開いた。
「ごめん。」
中から出てきた静香は今日も長い栗色の髪を綺麗にカールさせていた。
静香の部屋に入ると化粧品が散らばっていた。
「ごめーん!すぐ片付けるから。」
そう言ってブランド物のポーチに化粧品を直すと、雑誌片手に俺の隣に座った。
「ねえ?翔。来月誕生日だよね?
ピザ屋のバイト、このまま続けるつもり?」
「そんなの分からないよ。」
「こんな時給安いのに?
翔には絶対もっといい仕事あると思うんだけど。」
そう言って、静香は俺に雑誌を見せた。