BLACK PRINCE
「………は?」
「ねえ。やってみない?ホスト。」
「俺が?できる訳ないじゃん。」
「できるよ!
あたしだって最初はできないと思ってたもん。」
キャバ嬢の静香はまっすぐに俺を見つめる。
どうやら本気で俺をホストにしたいらしい。
「なんで俺なんだよ……。」
「あたし、前から翔の顔もスタイルも、ホストっぽいと思ってたんだ!
ホストになって今と同じ時間働いたら、10倍くらい給料くれるよ!?
ねえ、とりあえず体入からやってみない?」
静香は俺の太ももに手を置いて、子犬のような目をしてそう言った。
これをいつもやっていると思うと、さすがだと思った。
…………正直、静香は俺の苦手なタイプだ。
それでも、こうして付き合っているのは静香が俺を必要としてきたからだと思う。
静香は俺より3つも年上のくせに、しょっちゅう甘えてくる。
この時も、静香のいつもの甘えを聞いてやる。そんな軽い気持ちで始まった。
俺のホスト人生が。