BLACK PRINCE
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―――――……‥‥
騒がしい店内に、タバコやお酒や香水の匂いが混ざり合う。
ここで働いてもう一年半も経つ。
我ながら、こんなに続くと思っていなかった。
俺には相変わらず、大切なものなんて何もない。
「翔さん、5番テーブルご指名入りました!」
「はいはーい。」
俺が席に近付くと、客の同業者であろう男がニッコリ笑った。
「……‥あ。」
その男は一年前、静香の部屋で出くわした男だった。
こんな美形、そうそういないから忘れるはずなかった。
「翔くんだよね?久しぶりって言っても、もともと知り合いじゃないしね。」
確か、マコトという男は俺の目を見て優しく微笑んだ。
「あ、お久しぶりです。
ご指名ありがとうございます。」
俺は席に着いて、頭を下げた。