BLACK PRINCE
―――――……‥
俺は男と名刺を交換した。
男の名前は“一条 誠”で、やはり同業者。
俺より8つも年上らしい。
………‥とてもそんな風には見えないけど。
「静香から、翔くんの事を聞いたよ。
まだ職歴浅いんだね。」
「はい。まだ一年半です。」
「そっか。あのさ、単刀直入に言うね。
うちに来てくれないかな?」
まるでゲームにでも出てきそうな顔の一条さんは、恐ろしいくらいの目力を持っていて、吸い込まれそうになった。
「………‥え?」
「ここよりずっと箱もデカいし、給料もはずむよ。翔くんが、うちには必要なんだよ。」
「なんで俺…‥‥?」
俺は決して売り上げが良いとは言えない。
「ここだけの話、美形を揃えたいんだ。
王子様って言葉がピッタリ合う美形をね。」
一条さんは、内ポケットから広告を取り出した。
「……‥これ見て。女性の憧れ。」
その広告には、結婚式を挙げている新郎新婦が幸せそうに笑っていた。
「希望があれば、こういう演出もできる箱を作ったんだ。俺を筆頭に、美形な王子様がたくさん在籍していますよーって宣伝するんだ。」
一条さんの目はキラキラしていた。