12月になれば
楽器ケースを片手に裏門から学校を出て、坂を降りてすぐの駄菓子屋に寄る。
波打ったガラス張りの木の引き戸の奥に、モルタルの土間が3畳ほどあって、木の棚にはお菓子が所狭しと並んでいる。そのすぐ右横に2畳の畳敷きの空間があり、煙草や切手の入った棚が置かれていて、横にある窓からもそれらが買えるようになっている。土間の奥は住居になっているんだろう、カーテンが引かれている。
外にはアイスの冷凍ショーケースがあり、“昭和”を感じる懐かしのお店。
「こんちわ~」
二人で声を揃えて言うと「はいはい。いらっしゃい。」と背が低く、お節介好きそうな、人の良さそうなふくよかな60代後半の女の人がカーテンの奥から出てきた。
「あら、あんたら今日は早いね。」
「テスト期間に入ったんです。」
私が説明をすると「あぁ、ほんでか。」とおばちゃんは答えながら、ドカッと畳敷きの上にある座布団に腰を下ろす。