12月になれば


付き合い始めて半年位経った頃、彼の部屋でキスをした。


二階の窓のある壁際に立つ私の両肩に両手を置いた彼は、少し屈んで顔を傾けると私の顔に近付いてきた。


私がゆっくりと目を閉じると、私の両肩に置かれた彼の手に力が入って少し引き寄せられる。軽く触れる柔らかい唇。


「あぁ、メガネを掛けててもキスって出来るんや。」


 妙に冷静な気持ちでそんなことを考えながら彼のキスを受け止めていると、不意に濡れた、ザラリとした柔らかいものが唇に触れてくる。
そして私の唇の間を割るかの様にしてくるそれに、吃驚して戸惑いながらもそっと口を開くと、彼の舌が私の口の中に温かな唾液とともに入ってきて、私の舌を絡めとる。




 少し開かれた窓のカーテン越しに、彼の母親が庭に水を撒いているシャワーの音だけが静かに響いていた―。








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