望遠鏡
telescope
one
「うわぁぁぁーん!」
ある一軒家の一室で、惜しげもなく聞こえてくる泣き声があった。
「もう泣くのやめろよ、深春」
うんざり、とでも言うような言葉を投げかけたのは、
この部屋の主、間嶋芳隆(ましまよしたか)だ。
「そんなこと言ったって、悲しいんだから仕方ないじゃない」
そう返事をしたのは、先ほどの泣き声を出していた佐藤深春(さとうみはる)だ。
2人は小さい頃からの幼なじみで、何かあると深春は芳隆を頼ってきていた。
今回も、毎回のようにやってくる深春を芳隆が慰めているところだった。
「おまえが悲しいのも分かるけどさ、もう何回も経験してきてるだろ?」
「…うん。でも、やっぱり失恋には慣れなんてないんだもん!」
深春はそう言うとベッドの上で布団にくるまり、
鼻をすすりながらまた泣き出してしまった。
「そこ俺のベッドなんだけど…」とも言えずに、
芳隆は深春が泣き止むまで布団の上からぽんぽんと撫でてやる。