望遠鏡
「あのさ、その芳隆君と一緒に学校に来たり、
会ったりするのやめてほしいんだけど…」
「…え、なんで?」
深春は、彰の言っていることの訳が分からなくて目をぱちぱちさせる。
芳隆は幼なじみで、いつも話を聞いてくれて、仲が良くて。
それをなぜやめろと言うのか。
「なんで、って…。
深春ちゃんは俺の彼女だろ?」
「そうだよ。
私、先輩の彼女」
「だったら、俺のために会うのやめてよ」
そう言うと、彰は深春に近づき肩に手を置いた。
そしてそのまま深春に顔を近づける。
深春はキスされるのだと気づいて、必死に抵抗した。
「せ、先輩!
ちょっと、待って!」
彰は返事をせずに、臆することなくそのまま推し進めようとする。
今までとても優しかったはずの彰の行動が急に怖くなり、深春の目には涙が浮かんだ。
そして、最後の抵抗とばかりに、大きく叫んだ。
「芳隆ーっ!」
そう叫んだと同じくらいに、第3者の声。