望遠鏡

「あのさ、その芳隆君と一緒に学校に来たり、
会ったりするのやめてほしいんだけど…」

「…え、なんで?」


深春は、彰の言っていることの訳が分からなくて目をぱちぱちさせる。

芳隆は幼なじみで、いつも話を聞いてくれて、仲が良くて。

それをなぜやめろと言うのか。


「なんで、って…。
深春ちゃんは俺の彼女だろ?」

「そうだよ。
私、先輩の彼女」

「だったら、俺のために会うのやめてよ」


そう言うと、彰は深春に近づき肩に手を置いた。

そしてそのまま深春に顔を近づける。

深春はキスされるのだと気づいて、必死に抵抗した。


「せ、先輩!
ちょっと、待って!」


彰は返事をせずに、臆することなくそのまま推し進めようとする。

今までとても優しかったはずの彰の行動が急に怖くなり、深春の目には涙が浮かんだ。

そして、最後の抵抗とばかりに、大きく叫んだ。


「芳隆ーっ!」


そう叫んだと同じくらいに、第3者の声。


< 16 / 26 >

この作品をシェア

pagetop