望遠鏡
「ちょっと先輩。
深春嫌がってるじゃないですか、離してください」
そこに現れたのは名前を呼んだ芳隆ではなく、美代であった。
美代の登場のおかげで彰の手の力が緩んだので、
その隙をついて深春は美代のもとへと駆け寄る。
「…あの、先輩。
私やっぱり、先輩とは付き合えない、です。
…ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げ、深春は美代とともに、そそくさとその場をあとにした。
彰は追ってくる様子もなく、2人は途中で足を止める。
「美代、ありがとう。
でもなんであそこに…」
「たまたまジュース買いに来たら、2人が見えたからちょっとのぞいてたのよ」
「え、のぞき!?」
美代の衝撃発言に深春は吹き出したが、そのおかげで助かったのだから、そこは咎めないでおこうと考え直す。