望遠鏡
高校にあがるまでは、すぐそこの道でこけてしまったとか、
友達とケンカしたとか、親に怒られたとか、
そんなことで愚痴を言いに来ていた深春だったが、
ここ最近はもっぱら恋愛事情が主になっていた。
深春も芳隆に頼ってばかりではいけないと思いつつも、
小さい頃からの習慣が抜けずに、ついついここに足が向いてしまっていた。
布団の中で一通り泣いて、涙も少しひいてきたので、
深春は「ありがとう」と小さくつぶやいた。
声は布団の中にいるから、こもって芳隆には届かないかもしれないと思ったが、
撫でられていた間隔が少し短くなったので、おそらく聞こえたのだろう。
深春は安心してそのまま眠りについた。