望遠鏡

two


次の日、失恋で落ち込んでいたはずの深春は、
昨日の姿が嘘だったかのように元気になっていた。

これもいつものことである。

そんな深春を見て、芳隆は「はぁー」とため息をついた。


「なぁ深春、」

「ん?なぁに?」

「おまえ、失恋して1日で復活するとか早すぎんだろ」


学校までの道のりを、2人は昨日の話をしながら歩いていた。

小学校、中学校、高校とずっと同じところに通っているため、
毎朝一緒に登校するのが習慣になっていた。


「だって、昨日のうちに彼との思い出分泣いたから、もう平気だよ!
早く次の恋を見つけたいな」


深春の言葉に、芳隆はげんなりというような表情を見せた。


「おまえも懲りない奴だなぁ。
毎回俺のとこに泣きついてきてるくせに」

「だってほら、あれは、一種の儀式っていうか…」


深春は痛いところをつかれた、と目を泳がせる。


< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop