望遠鏡

「まぁいいけど。
次に失恋しても、俺のとこに泣きついてくるなよ?」


半ば脅しのように言われて、深春はぐっと言葉を飲み込んだ。

芳隆の表情は、そんなに変わったようには見えないが、
もし本当に次に泣きついても聞いてくれなかったら、
と深春は少し落ち込んだ。

そんな深春の様子に気づいたのか、
芳隆は「深春、」と優しく呼ぶ。


「次はもっとちゃんと相手と付き合えばいいじゃないか。
がんばれよ」

「…うん、分かった。
ありがとう」

そんな話をしていると、学校にはあっという間に到着してしまった。

深春と芳隆は偶然にもクラスが一緒で、そのため同じ一角に下駄箱がある。

登校してきているクラスメートに交じって、2人は上履きに履き替えた。

と、そのとき。


「よ、よ、芳隆!!」


突然、深春が声をあげた。


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