望遠鏡
上履きに履き替えた芳隆は、今度はなんだと言わんばかりの表情を深春に向ける。
深春は目をキラキラさせながら、芳隆に手に握ったものを見せた。
「見て!これ!」
「はぁ!?
いまどきラブレターかよ!!」
「失恋したばかりですぐにこんなものが届くなんて…
神様のおぼしめしだね」
性格に多少難有りの深春だが、なぜかそれなりにモテる。
それは高校に入ってからは特にモテるようになった。
華のモテ期というやつだろうか。
深春自身は気づいている様子もないが、
毎回愚痴を聞かされ、そばにいる芳隆にとっては、
気づかないほうがおかしいと言うほどのものであった。
深春が失恋したということが、おそらく噂で広まったのだろうと芳隆は思った。
深春はといえば、誰からの手紙だろうかと意気揚々と手紙の封を開けていた。