Whistle

出会い

　毎日毎日……
家と学校とバイトに行くだけの
日々に飽き飽きしてきた｡

渋谷ナツは公立高校に通う､普通
の何処にでもいる女子高生｡

趣味も無ければ､大した特技も
無く､毎日平凡な日々をダラダラ
と送っている｡


午後10時｡ようやく､バイトが
終わり､通いなれた道を自転車
で走っていたナツ｡

ＭＤプレイヤーを忘れ､今日は
音楽の無い帰り道｡

空気が澄んでいるようで､踏切
の男や遠くにいる救急車のサイ
レンも聞こえる｡

「…眠っ…」信号で止まった
ナツはため息混じりに欠伸した｡

不意に聞こえた口笛｡
やけに静かな夜風の中に聞き
慣れないメロディが流れた｡

信号が青に変わるのも無視して
ナツはその口笛のメロディに
聞き惚れていた｡


次の日も同じような時間に
口笛は聞こえた｡楽しいメロディ
では無くて､少し寂しげで暗い
曲調のメロディ｡

音楽が得意でないナツにも､
そのくらいは分かった｡

何処から聞こえるんだろう…

単純な好奇心が生まれ､ナツの
足を運ばせた｡

口笛を吹く､誰かに会いたいと
ナツは強く想ったのだ｡