気まぐれ猫
 学校の帰り、俺は花屋で花を買う猫を見つけた。
「どうすんだろ、あれ」
 申し訳ないとは思ったが、後をつけてみることにした。
 しばらく歩くと、見覚えのある通りに出て、見覚えのある建物が目の前に現れた。「……病院?」
 そこは母さんが入院していた病院だった。
 院内に入ると、懐かしい匂いがした。
 白い壁に薬品の匂い、呼び出しのアナウンスに注射を怖がる子供の泣き声。
 無性に懐かしく、同時に母さんのことを思い出した。
 懐かしさに浸りすぎて、猫を見失ってしまった。
 猫を探しがてら、ちょっとだけ風景の変わった院内を探検した。
 あの時からずっといる看護師さんもいて、俺を見ると声をかけてくれた。
「ホントに懐かしいな……」
 初めのうちは楽しかったが、だんだん歩きすぎた疲れと、猫が見つからないイライラで結局待合室へと戻ってきた。
「てか花持って病院って、明らか見舞いだよな。……初めからこうすりゃ良かったじゃん」
 半ば自分に呆れながら、受け付けで聞いた猫のお兄さんの病室へと向かった。
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