気まぐれ猫
 それから俺は毎日お見舞いに行った。猫はいいと断ったが、俺が心配でいてもたってもいられなかった。
 今日も当然来たがいつもと少し違った。宏樹と司と祐輔を連れてきた。
「なんであんた達まで来るんだよ!」
 猫は未だに嫌がっている。
「ここまで来てそれはないだろ」
 まるでコントのような言い合いをしながらお兄さんの病室に入ると、お兄さんがこっちを見ながら笑っていた。
「結構前からみんなの声が聞こえてたよ」 ……なんて迷惑な奴らだ。
「今日は賑やかだね。夕璃の友達?」
「あたしの友達なわけない」
「何だよ、その言い方」
「あの、俺の友達なんです。司と宏樹と祐輔です」
「はじめまして」
 三人が声を揃えて言った。
「よろしく。いろいろ話は優希くんから聞いてるよ。宏樹くんはー」
「あーー!!いいですから!」
 俺がお兄さんに話した三人のことは、恥ずかしくて、とてもじゃないけど本人に聞かせられるものじゃない。
 気にしている三人をお構いなしに話題を変えた。
 横目に猫を見ると珍しく笑っていた。
 最近、猫のいろんな顔を見ている気がする。
< 34 / 45 >

この作品をシェア

pagetop