風のおとしもの。
右の唇をつり上げて笑う里香さんは、自信あり気に言う。
たっ、確かに初めて見た時から運動が出来そうな方だと思っていましたが、まさか得意科目とは!
私は運動がからきしなので羨ましいです!
「やっぱり走るのが早かったり、体が柔らかかったりするんですか?」
「まぁ………てか、やっぱりって何」
「いえ、体育が得意だってことはきっとすごいんだろうなぁって思いまして」
里香さんに習ったら私も運動音痴を抜け出せるかな。
勉強は頑張ればそれなりに上達するのに、運動はどれだけやってもダメだったから羨ましい。
図書室なので小声ではあったけど、少し興奮気味になってしまった。
「…………何それ。嫌味?」
「えっ……」
すっとその場の空気が凍りつくのがわかった。
里香さんの目が一層鋭くなった気がする。