風のおとしもの。






「ほら、ハンカチ貸すから顔洗え」

「しゅみばせ―――」
「いーから!」


里香さんは顔を洗うようにと、トイレまで連れてきてくれました。
ハンカチまで貸して頂いて……申し訳ないです。


「……落ち着いたか?」

「………はい」

「そうか」

「すみませんでした。あの、これ洗ってお返ししますね」

「いいよそんな。もう勉強してすぐ帰るんだし」

「でも―――」
「だからいいって!」


強く言うと、里香さんにハンカチをひったくられる。
また怒らせてしまった。
せっかく良くしてもらったのに、私………。


「ごめん……なさい」

「………」
「………」


長い沈黙が流れた。






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