風のおとしもの。




「……お母さん、もう良くなったのか?」

「…え、と………」


これは言うべきなのかな。
言葉に詰まる。
迷っていると里香さんは手で顔を覆った。


「……あぁ、ごめん。……私、なんて謝ればいいか……」

「いえ、謝らないで下さい!私こそこんな暗い話をしてしまって、すみませんでした」

「………言いたくないことは、無理に言わなくていいから」

「言いたくなかったわけではないです。ただ反応に困ってしまうかなと思って…。
私もすみませんでした。……でも、誰かにこんなこと話したのは初めてで、ちょっと新鮮な気分です」


出来るだけ明るく言うと、里香さんは驚いたみたいだった。


「佳代にも言ってないのか?」

「はい、聞かれなければわざわざ自分から話すことではないので……」

「まぁ、そうだよな……」


沈黙したまま向かい合っていると、里香さんは図書室を出た時のように私の手を取る。







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