風のおとしもの。
「………英語、苦手なんだ。教えてくれないか?」
「ぇ……あ、はい!」
「ありがとう」
ふっと微笑み、里香さんはそのまま歩き出す。
少しだけ強く私の手が握られて、里香さんの体温が伝わってくる。
「もし嫌じゃなかったら、また聞かせて。色んな話」
「え………?」
「雛。あんたのこと、ちょっと気に入った」
「あぅ、えっ、光栄ですっ」
「ホントにおかしなやつだな」
ひとしきり笑い、里香さんは私に向き直った。
繋いだ手は離れたけど、温かさがまだ残っている。
それがまるで私を励ましてくれているみたいで。
「試験終わったら、遊びに行こうな」
「……はい!」
「いい返事だ」
「はい!」
声を上げて笑う里香さんの後に続いて、図書室に戻った。