風のおとしもの。




「ほら、佳代の次、入れなよ」

「いえ、里香さんから……」

「実は歌うのって苦手なんだ。それに、雛乃が歌うところを見てみたい」

「うぇっ、えっと、えっと………わ、わかりました」

「ん」


機械を持ち上げると、里香さんは満足そうに頷く。

とは言うものの―――。
私も歌って苦手なんだよなぁ。
まず最近の曲がわかんないし……。
なっ、何にしよう……っ!


「最近のものがわからないなら、古い曲でもいい。佳代も私も、いつもわかるものばかり歌ってるから」


里香さんはなんで私の考えていることがわかるんでしょうか!?
でも、なら気にせずに入れてしまおうっ。

「で、でわっ」

私は中学の頃流行った歌を歌った。
そんなに下手っぴでもなかったみたいで、美紀さんや佳代さんは懐かしい懐かしいと笑ってくれる。


「緊張しました」

「上手かったぞ」

「ありがとうございますっ」




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