風のおとしもの。
「なんか言ったらどーなの?」
「ぇと、私………」
「聞こえないんだけどぉー?」
美紀さんが耳を寄せてくる。
私は声が掠れないように、喉に力を込めた。
「私その。何か、美紀さんの気に障ること、を、してしまった…でしょうか………?」
「もー、存在が気に障るってゆーかぁ?佳代に可愛い可愛いって言われていい気になって、ぶりっ子とかキモすぎる」
「そんな、私ぶりっ子なんて―――」
「うっさい黙れ」
「っ………」
「とりあえずさぁ、あんまし佳代に近付かないでくれる?」
ずいっと体を出した美紀さんに睨まれてしまう。
そんな、どうして―――
「じゃ、私行くから」
美紀さんは何事もなかったかのように笑顔を作ると、トイレを出ていった。