風のおとしもの。





普段通りなら聞き取りづらいくらい小さな声。
今は体が近くて、佳代さんの唇が私の真横にある。
ひどく挑発的な声色で、ドキっと心臓が跳ねる。

どうって………?


「こんな話するってことは、許したんだよね?鷹文のこと…」

「それは……」


許さないって言ったくせに。
そう呟いて、佳代さんはクスクスと笑った。
耳にかかる吐息がくすぐったくて身をよじる。
でも佳代さんの両手がそれを許してはくれない。
かよさん……?


「あいつと、何話したの?」

「何って……」

「鷹文から習ったんだろ?私が『勘違い』してるってこと」


いつも優しい佳代さん。
こんなに意地悪で熱のこもった声、聞いたことない。
怒ってる風でもなく、ただ楽しそうに喉の奥で笑う。
こんな風に笑う人じゃない。


「どうやって習ったの?口頭?それとも―――」
「っ」


その続きは聞いちゃいけない気がして、佳代さんの口を塞いだ。
違う。
佳代さんはこんな人じゃない、こんな、違う!






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