風のおとしもの。





「へぇ、そうなんだ。………ねぇ、あいつ、上手かった?」


「何を―――」
「今更純情ぶらなくてもいいんじゃない?」


私の手は簡単に振りほどかれてしまい、佳代さんの手にぎっと力がこもる。

痛い。
少し長めな佳代さんの爪が食い込む。


「ね、私優しかっただろ?なんでだと思う?」


痛みに焦り、混乱した頭には、思考が追いつかない。
佳代さんも私の返事を待つ様子はなくて、淡々と言葉を紡いでいく。


「鷹文がさ、君のこと見てるって気付いたからなんだよ」

「っ」

「君をきっかけに、前みたいに戻れたらって考えた」

「かよ、さんっ……」

「多少話せるようにはなったけど、鷹文と君ばかり仲良くなって……鷹文にとっての私は、君以下なんだって思い知るだけで、苦痛だった」

「そんなこと……」

「今だって、やっと鷹文と引き離せると思ったら、いつの間にか元に戻ってる。私だけ躍起になって、取り残されてて、馬鹿みたいだ」


絞り出すような悲痛な声。
佳代さんがそんな風に考えていたなんて、思いもしなかった。

佳代さんは今、泣いてるのかもしれない。
手に一層力がこもって、震えている。





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