風のおとしもの。




あと近づくとよくわかるのが、匂いだ。
たまにすれ違う時も、小鳥遊はいつもこの匂いがする。

髪から、だよな。
多分シャンプーだと思う。
体はわからない。

いや、わかったら問題だろ。
………でも今なら…。



「ぁっ、あのっ……!」


びくっと震える小鳥遊。
それで俺は我に返って、体を離した。

今俺、何考えて……―――!
心臓がドキドキいってる。
胸の辺りを掴んで、落ち着くよう促す。
小鳥遊を見ると、両目をつぶって小さくなっている。

………ちょっと、いじめすぎたか。



「………こーゆーこと」

「…………へっ?」

「高見が勘違いしてんのが」

「あ、えと………」



なるべく平静を装って隣りへ座り直る。
…俺も途中からおかしかったし、色々アレなんだけど……。
まぁこれで懲りただろ。

高見との誤解も解けるだろうし、俺は悪くない。



「…ほら、リボン……―――!?」



解いたままのそれを手渡そうとしたが、小鳥遊は虚ろな瞳で佇んでいた。








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