風のおとしもの。
***
あの日から、俺は夏期講習に出るようになった。
もちろん勉強に目覚めたなんて高尚なもんじゃない。
小鳥遊だ。
「雛乃。今日の講習の後、美紀の数学を見てやるんだ。空いてるか?」
「………ぁっ、はい」
「ん。なら一緒に行こう」
「はい……」
目に見えて元気がない。
今も相手が藤沢だとわかると安堵しているのがわかる。
あれ以来、高見と話す度表情が陰る。
傍から見ても気にならない違和感。
あの場にいなければ俺だって気付かなかったと思う。
それくらい器用に、高見は小鳥遊を避けていた。
いや違うな。
拒絶…っていうのか?
もっと辛辣な感じの…。
「村井、珍しいじゃないか」
「げっ………」