風のおとしもの。
「別に。こいつ体調悪いみたいだから連れてきただけ」
宮崎先生を見ると、村井君は私の頭に置いた手を下ろす。
「ほー?」
「ごめんなさい、勝手に入ってしまって……」
ベッドの上で正座に座りなおした私に、宮崎先生はいいのいいのと保健室のドアを閉める。
「そ・れ・よ・りぃ………邪魔しちゃった?ごめんねぇ」
「それ教師のセリフじゃねぇから」
「それにしてもあんた、随分可愛い子連れてきたのねぇ」
聞けよとツッコむ村井君には見向きもせず、私はまじまじと見つめられる。
先生、顔がっ、顔が近いです!
私は居心地が悪くなり視線をさ迷わせ、どうするべきか考えていた。
「……あれ。あなた、どっかで見たような……」
「宮崎ー、俺はもう行くからなー」
「あぁ、誰だったかしら。思い出せそうなのにっ」
村井君がクソババァと毒づくと、宮崎先生は胸にさしていたボールペンを投げる。
「いって、何すんだよ!」
「どーせまたサボるんでしょ?だったら彼女の側にいてあげなよ、なんならアタシ出て行くからさ」
「だから、それ教師のセリフじゃねぇって!」
ムキになる村井君の姿は、なんだか新鮮だった。