風のおとしもの。
「この問題がわからないんです。どの公式を使って解くのかも全然で……」
「へぇ、意外。もっと賢いんだと思ってた」
「……私、バカにされてます?」
「あぁいや、違う違う。一応年上だし、勉強出来るのかなって」
「一応ってなんですか」
あんまりな物言いに、私はムスっとした表情のままうなだれる。
それを見て笑う高見さんの表情もうかがえて、より不満が募る。
確かに私は長めの黒髪で前髪はぱっつりで、地味だから勉強が出来るように見られることは今までにもなくはなかった。
でもそんな言い方しなくたって………。
「しかも意外に細かいこと気にするタイプだね」
「……やっぱり、私バカにされてます」
堪えるように笑う高見さんを見て、自分の顔が一層曇っていくのがわかった。
人前でこんな顔しちゃいけないってわかってはいるけれど、高見さんに言われるとなんだか面白くない。
そんな私の様子を知ってか知らずか、高見さんは特に気にするでもなく隣りの席に腰掛ける。
こんな私だって、一応頑張ってるんですっ。
つんとそっぽを向いていると、高見さんは私の問題集を手に取った。
「ごめんって。そんな怒んないでよ」
「別に、怒ってなんかないですけど」
意地悪な人だと心の中で毒づいていると、高見さんはまた笑い出す。
むむむっ……。