風のおとしもの。
「村井!お前また小鳥遊に!」
廊下の真ん中で騒いでいたせいか、山口先生が走ってくる。
すると村井君の力が緩み、倒れそうになった。
「くっそ、てめぇら覚えとけよ!」
「何それ、脇役の捨て台詞?生で聞いたの初めて」
「村井君!駄目です、一緒に謝りましょう!」
転ばずに持ちこたえた私は、走っていく村井君に声を掛ける。
それに対してめんどくさそうに舌打ちした村井君は、一番近い階段の方へ駆けていく。
「おい、小鳥遊!明日絶対ぇ返せよ!」
「あ、あっ……」
「逃げ足が速いのもまた、雑魚ぽい感が―――」
「もうっ、高見さん!」
調子のいい高見さんを注意していると、いつの間にか村井君の姿どころか足音さえ聞こえなくなっていた。
山口先生は階段に向かって叫ぶと、忌ま忌ましそうにする。
「小鳥遊、大丈夫だったか?恐喝でもされてたのか?」
「いえ、村井君が携帯電話を使っていたので、注意してて……」
「なっ……」
村井君には悪いけど、やっぱり校則は破っちゃダメだもの。
私が正直に話すと、山口先生は驚いたような困ったような顔をした。
村井君が校則を破ってしまったことがショックだったんだ。
私がそう思っていると、高見さんは何故笑いを堪えながら肩を揺する。