ヒワズウタ ~チヒロ~
ほんの一瞬、
眩暈と吐き気と、二の腕の鈍い痛みに意識が戻った。
白い景色は、徐々に色味を帯びてきた。
それと同時に感じた、とても懐かしい温もり。
「お母さん・・・」
子供の頃、抱っこしてもらった母の温もり。
何年振りだろう。
酷く温かくて、優しくて、
訳もわからず、涙が出た。
「・・・大丈夫?
ここのバイトの子だよね?」
母の声とは似ても似つかぬ低い声に、私の意識は完全に戻った。