ヒワズウタ ~チヒロ~

よく見れば、端整な顔立ちだ。


でも、

銀色の縁の眼鏡の奥の表情は、疲れて見える。



弁当を温め終え、袋に入れて渡す時、彼は決まって小さく頷く。


そして、聞こえないほどの声の



「ありがとう」



スラリと伸びた背筋は、滲み出る疲れを拭うほどに姿勢が良い。


店を出る足取りは、とても優雅に見えた。


どうしてだか、今日に限って私は彼のことが気になってしまった。

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