ヒワズウタ ~チヒロ~
しかし、いつもの時間になっても彼は来ない。
もしかしたら、昨日みたいに、もう少し遅い時間の電車かもしれない。
バイトも終わりの時間がきた。
雑誌でも読んで待ってみよう。
だって、もう一度、きちんとお礼を言いた。
何よりも、名前も知らないなんて。
そんなの、嫌だ。
私の知らないうちに、私の中の「彼」は、どんどん大きな存在になっている。
何冊目かの雑誌を読み終えて、入り口を見ると、何人かのお客さんに混じって「彼」が入って来た。