ヒワズウタ ~チヒロ~
彼は、まだ私に気づいてないみたいで、そのまま、まっすぐビールの売り場へと進んでいく。
その足取りは、やっぱり綺麗だった。
私の周りの男の人とは違って、どことなく大人の男の人って感じがする。
―――はぁ、やっぱりカッコイイかも。
なんて浮かれていたら、彼と目が合った。
見惚れてる場合じゃなかった。
名前を聞いて、お礼を言って、
それから・・・
そんなことを考えながら、彼のところに行こうと歩き出す私に、
彼は、昨日と同じ、やわらかい笑顔を向けてくれた。
「今日は、元気みたいだね・・・チヒロちゃん?」
いたずらっ子みたいな笑顔に、胸のあたりが、ぎゅっとなった。