誕生日には花束を抱えて【完】
<正平>


終業式から帰って来て、部屋でひとり、ゲームをしていると。


「ねえ、映画、行こ」


愛がやって来た。


「映画~? 予備校、どうすんだよ?」


オレはゲームから目を離さずに答えた。


「予備校は、夕方からでしょ」

「映画って、何の映画?」

「『愛の選択』っていうやつ」

「やだよ、そんなの。恋愛ものだろ?」

「いいじゃん。今日は、私の誕生日だよ」

「でもさ――あ、くそっ」

「もう、ちゃんとこっち見て話してよ」


愛が、突然、ゲームの電源を切った。


「ぅわあ~、何すんだよ」


もう少しで、クリアできそうだったのに。


文句を言おうと、愛を見ると。

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