誕生日には花束を抱えて【完】
正平と見に行った映画は、『愛の選択』。


「めっちゃロマンチックな気分になれるらしいぜ。……ま、妹が言ってたんだけど」


小泉くん(の妹)推薦の、恋愛映画。


これを見ればさすがの正平も「愛の告白」をしたくなるはず。




映画が進むにつれ、私はストーリーに夢中になった。


そして、とっても浪漫的な気分に――。


……正平と、手、つないじゃおっかな。


なんて、正平に目をやると。


――ね、ね、寝てるし!


もう、なんなのよ――。


気持ち良さそうに眠っている、正平。


その頬を思い切りつねってやろうと手を伸ばしかけて、この後の予備校のために筆箱が入っていることを思い出した。


筆箱から、ネームペンを取り出して。


――バカ。


左の頬に、大きな字で書いてやった。

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