誕生日には花束を抱えて【完】
トイレに入って鏡に映った自分の顔を目にした瞬間、


「な、なんじゃ、こりゃあ――」


今まで一度も真似したことのない、松田優作の名ゼリフが口から飛び出した。



――バカ。



右の頬――いや、鏡だから左の頬に、大きな黒い文字で書かれていたのだ。


そりゃあ、注目されるって!


備え付けの石鹸で洗うと落書きはなんとか落ちたが、オレの怒りは消せない。


用も足さずに、愛のところへ戻った。

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