誕生日には花束を抱えて【完】
「なあ、プレゼント、何がいい?」


試しに耳元で優しく囁いてみたが、


「……いらない」

「え?」

「欲しいもの、ないもん」


……とりつく島もない。


「私、予備校、休むから」

「え?」

「正平は、ちゃんと授業出なさいよ。バカなんだから」

「おい、待てって」


今日の愛は、1人で歩かせたくない。


オレは愛の腕を掴んだが。


「放して!」


愛はその手を振りほどき、


「ついて来ないで! ついて来たら、絶交だからね」


オレをにらんだ。


その冷たい目に怯んでしまい、オレは愛を追いかけることができなかった。

< 114 / 200 >

この作品をシェア

pagetop