誕生日には花束を抱えて【完】
「こんな感じはどうでしょう」


それは、ひらひらした、ピンク色の花。


甘い香りが、鼻腔をくすぐった。


「これは、スイトピーです。あの子のイメージにぴったりでしょう?」


おじさんが自信たっぷりに言うので、


「……はい」


うなずくしかなかった。


チューリップはないし、しょうがない。


「じゃあ、それで花束、作ってください」


オレは、スイトピーの花束を注文し、それを紙袋に入れてもらった。


「花束を渡す時は、袋から出して渡してあげてね。その方が絶対喜ぶと思うよ」


おじさんは紙袋を差し出しながら、にっこり微笑んだ。

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