誕生日には花束を抱えて【完】
<愛>


一方的に電話を切られて外に出たけれど、不機嫌をアピールするために正平とは目を合わせなかった。


「なに怒ってんのか知んねぇけど、いい加減キゲン直せよ」

「なによ――」


言い返そうとして顔を上げると、目の前がピンクに染まって優しい香りが漂った。


緊張した面持ちで正平が差し出しているのは、スイトピーの花束。


「……かわいい」


思わず顔がほころんでしまった。


「これ、……私に?」

「おまえが言ったんだろ。花束がほしいって。――ほら」


正平は、私の手に花束を持たせた。

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