誕生日には花束を抱えて【完】
その夜、売店で彼女に会った。


「あ、昼間はありがとう」


彼女は弱々しく微笑んだ。


それから、お互い、自己紹介をした。


彼女――真知子さんは、1週間前、事故に遭って意識不明になった旦那さんの付き添いをしているという。


一緒に病棟へ戻り、なんとなく真知子さんの旦那さんの病室へ。


「夫、なの」


ベッドには、頭に白い布を巻かれた男の人が横たわっていた。


彼は点滴の管や赤や緑やたくさんの線をつけられて、半開きの口元から荒い呼吸を吐いていた。

< 140 / 200 >

この作品をシェア

pagetop