誕生日には花束を抱えて【完】
その姿は、私に強い衝撃を与えた。


事故で脳にダメージを受けた、彼。


私とは違う病気だけど。


私も、こんなふうになる――?


たくさんの管や線をつけられて。


誰かを認識することもできなくなって。


やつれ果てて。


そして――。




「病室、戻ります」


私は彼の病室を出た。


数カ月後の、自分――。


これ以上、見ていられなかった。




その夜は、眠れなかった。


目をつぶると、彼のようにベッドに横たわる自分の姿が浮かんできて。


そして、思った。


そんな姿――。


正平にだけは見られたくない。


絶対に、見せたくない――。

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