誕生日には花束を抱えて【完】
「まさに、運命の出会い、だったのよ」


「大学の友達の、お兄さんなんだけど、すっごくカッコよくて、優しいの」


「やっぱり、年上って、いいわね~」


ひとりではしゃぐ愛を、オレは、茫然と見つめることしかできなかった。


「正平。……今までありがとう」


ふと、愛は真顔でオレを見つめて。


「……正平も、幸せになってね」


静かに微笑んだ。


「ちょ、ちょっと、待てよ」


オレは、ようやく、言葉を発することができた。


「カレシって、なんだよ。オレたち、旅行しようって約束したじゃん」


オレが責めると、


「ああ、あれ――」


愛の顔から微笑みが消えた。


「あんなの、冗談に決まってるでしょ」


別人のような、きつい口調がオレの胸に突き刺さった。

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