誕生日には花束を抱えて【完】
<愛>


私は、いったん退院した。


大学を辞めて、特にやることもなくボーっとしていると、頭に浮かんでくるのは正平のことばかり。


こんなんじゃ、ダメ――。


秋物の服でも買って気分転換しようと、私はショッピングに出かけた。




駅前のデパートで服を見ていると、不意に肩を叩かれた。


「よかった、退院したのね」


振り返った私に笑顔を向けていたのは、真知子さん。


2カ月とは比べものにならないくらい、元気そうだった。




それから、私たちはコーヒースタンドでジュースを飲んだ。


「あの時は本当に辛かったけど、でも、最期まで彼と一緒にいられてよかった。

あの10日間は、神様からのプレゼントだったって、今は心から思えるの」


真知子さんが穏やかに微笑んだ時、私の心は大きく揺らいだ。

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