誕生日には花束を抱えて【完】
だが、別れ話は、まだ途中。


サトちゃんを放って行くことは、さすがにできなかった。


愛が角を曲がって見えなくなると、ゆっくりとドアを閉めた。



「正平くんが好きな人って、あの人?」

「……うん」

「あの人、正平くんがケーキ苦手だってこと知らないの?」

「いや、知ってるよ」

「知っててケーキ持って来るような人のどこがいいの?」




これは、小6からの、オレたちの習慣。


だけど、サトちゃんには教えない。




「私じゃ、ダメなの?」


涙が浮かぶ瞳で見つめられ、


「……ごめん」


オレはそっと目を逸らした。




数秒後、サトちゃんは部屋を出て行った。

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