誕生日には花束を抱えて【完】
「さっき、サトちゃん、泣いてたぞ」


玄関ドアが開いて正平が顔を出すなり、オレは言った。


そして、部屋に入って気づいた。


もみじ堂の、ケーキの箱――。


神崎が来たこと。


「ケンカでもしたのか?」


神崎のことには触れず、話を聞いてみる。


「もうつき合えないって、言った」

「なんで?」

「やっぱり、愛のことが好きだって、わかったんだ」

「…………」

「そしたら、愛が来て」

「神崎が? それで、神崎は?」

「帰った」

「……帰った?」

「まだ、サトちゃんと、別れ話の途中だったんだ」

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