誕生日には花束を抱えて【完】
1カ月以上もそんな状態が続く中――。


12月になって、師匠から電話があった。


「深見には聞かれたくない話があるの。できたら、こっちまで来てくれない?」


師匠が通っているのは公立の医科大学。


オレの大学とは結構近くて、オレは言われるまま、師匠に会いに行った。




「今から話すことは、絶対、深見には言わないでほしいんだけど」

「あぁ」

「それから……小泉もショック受けると思うけど、覚悟してね」


師匠は射抜くような瞳で、オレを見た。


以前から、オレは感じていた。


師匠は、オレが神崎を好きなことに気づいている――と。


「実はね――」


それから師匠は、静かに話し始めた。




神崎が正平に嘘をついた理由――。


神崎の余命が、わずかだということを。




理解した瞬間、オレの思考は停止した。

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