誕生日には花束を抱えて【完】
電話を切ってから、いったい、何回時計を見ただろう。


――ピンポーン。


待ち遠しかった瞬間が、訪れた。


「よぉ、久しぶり」


私に向けられた、正平の笑顔――。


最高の誕生日プレゼントだった。


「おばさんたちは?」


階段を上る私の後ろで、正平が言った。


私のお母さんは料理が大好き。ほとんど、一日中、キッチンで過ごしている。


だから、いつもなら、私の家に入ると料理の匂いや、炒める音、蒸し器の音なんかがしてくるけれど、今日はそれがなかった。


「お父さんは仕事。お母さんは、正平んちで、おばさんとプチパーティーやるって。

たくさん料理作ったから、お腹すいたら食べに来てもいいって言ってたよ」


ほんとは、お母さんは、気を利かせてくれたんだと思う。


私と正平が、2人きりになれるように。

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